異形煉瓦と加工煉瓦

 本サイトでは、標準煉瓦(形が直方体のもの)とは異なる形状の煉瓦を、異形煉瓦や
 加工煉瓦と呼んでいる。筆者の異形煉瓦と加工煉瓦の判別基準は単純で、当該煉瓦が
 現場で加工されたか否かである。つまり、工場で製造され、そのまま現場に搬入されたと
 思われる煉瓦は異形煉瓦であり、明らかに現場で加工されたと思われる煉瓦は加工煉瓦とした。
 煉瓦を切断・加工する道具は、金槌と鏨(たがね、ノミの一種。目きりとも呼ばれる)であり、
 煉瓦職人はこれらを巧みに使い(とうよりもこれだけで)、手作業で煉瓦を任意の形状へと加工した。
 なお、煉瓦樋門の設計書には、異形煉瓦は特別鋳型煉瓦などど記されている。

異形煉瓦

 くさび形
↑くさび形
 
天神沼樋(天神沼、吉見町、1903年)
 卵形の通水断面:アーチリングには、
 くさび形の煉瓦が使われている。
 通水断面部分の大量の煉瓦を現場で、
 割っていては効率が悪いので、これは工場で
 製造されたものであろう。
   面取り
  ↑面取り
 
古笊田堰(久喜市、備前堀川、1909年)
   煉瓦による隅石
  ↑煉瓦による隅石
   
前吐樋管(東松山市、都幾川、1903年)

加工煉瓦

 面壁
↑面壁(アーチリングの周囲)
 
落合門樋(騎西町、見沼代用水、1903年)
 アーチリングの上部には、三角形や台形に
 加工した煉瓦が使われている。
 樋管本体(地中に埋設される部分)は
 アーチリングのままで、上部に加工煉瓦は
 積まない。
  面壁と翼壁の結合部
  ↑面壁と翼壁の結合部(天端から)
  
小針落伏越(行田市〜川里町、
          小針落〜旧忍川、1914年)
  面壁と翼壁の結合部は、鉄筋などの
  補強はなく、モルタルで接着しただけである。
  構造的に大丈夫かと不安だが、100年近くも
  現役なので、意外に強度はあるようだ。
  翼壁天端
 ↑翼壁天端
  
辯天門樋(行田市、旧忍川、1905年)

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