沼口門樋 (その1)(その2

 所在地:川越市鴨田〜古谷上、伊佐沼(八幡川)  建設:1905年

幅(内法) 高さ 長さ 袖壁長 ゲート その他 寸法の単位はm
巻尺または歩測による
*は推定値
2.2 3.4(門柱1.6) 1.4 0.9 木スルース×2  

 沼口門樋は伊佐沼(かんがい用のため池)の東側約50mの八幡川に設置されている。
 伊佐沼溜池用水普通水利組合(明治37年(1904)6月に設立、→荒川右岸土地改良区誌 p.278)によって
 建設された施設だと思われる。沼口門樋が設けられた八幡川は笹原排水とも呼ばれ、
 伊佐沼を起点として下流地区の農業排水を集めて、入間川に放流していた。
 
八幡川には沼口門樋から1.2Km下流にも、笹原門樋(1901年建設、煉瓦造り)が設けられている。
 八幡川という名称は、沼口門樋から600m下流の左岸に鎮座する八幡神社(川越市鴨田)に由来するのだろう。
 なお、現在の伊佐沼は水源を持たず、実質的には伊佐沼代用水路のファームポンドとして機能している。

 沼口門樋は伊佐沼から農業用水を取水するための施設だと思うのだが(構造的には堰であり、
 呑み口の幅に対して通水断面が狭めてある)、伊佐沼の堰堤(土手)には直接設けられていない。
 もっとも、伊佐沼の形状自体が明治時代からは大幅に改修されている可能性が大である。
 沼口門樋の堰柱には危険水位と思われる線が刻まれていて、用水と悪水を判別する指標となっている。

 伊佐沼は洪水時には周囲の田畑や旧.赤間川(明治時代には伊佐沼の唯一の水源)の排水先となった。
 八幡川からも伊佐沼へ洪水流が逆流してくることがあったようなので、沼口門樋は逆流入を
 防ぐ目的を持った、名前のとおり門樋(明治期には逆流防止用の水門を指した)なのかもしれない。
 なお、伊佐沼の排水施設としては、沼の西南端に大樋圦(石造りの樋管)と洗堰が設けられていて、
 これらから九十川(一級河川)へと排水している。排水地点が九十川の管理起点である。

 沼口門樋(上流から)
↑沼口門樋(上流から)
 堰柱は石材を金具で結束して作られている。
 笠木(最上部の水平な石材)の寸法は310×29×31cm、
 花崗岩のようだ。中央の石材には
施設名が刻まれている
   沼口門樋(下流から)
  ↑沼口門樋(下流から)
   こちら側の石材には、竣工年が刻まれている。
   煉瓦組みの保存状態は良いのにゲートは朽ち果てている。
   沼口門樋は、もう使われていないのだろか?

 横から
↑横から
 造りは非常にシンプル。煉瓦積みの側壁の上に石材を
 渡して、管理通路とし、なおかつ側壁の転倒も防いでいる。
 使われている煉瓦の平均寸法は、21
6×106×57mmと
 小ぶりだが、
機械成形の跡が確認できる。

   堰柱
 ←堰柱(伊佐沼側から)
 柱には水平線が刻まれ、
 (天端から約40cm下)、
 上側には悪水、
 下側には用水と
 記されている。

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