通潤橋の工法

 通潤橋のように水を運ぶための橋を、水路橋(橋の姿をした送水施設)といいます。
 水路橋で水路が管(パイプ)のものは、水管橋と呼ばれます。 →日本最大の水管橋
 正確に区分すると、通潤橋は石造りの水管橋(しかも逆サイフォン形式)ということになります。
 通潤橋では、(谷の地形から)橋幅の割には高さが必要、送水による振動から橋全体を守る、ことから
 橋の安定のために、ありとあらゆる工法が採用されています。
 人が渡る橋ならば、多少壊れても渡るのはなんとかなりますが、通潤橋は水が橋の中を流れるので、
 普通の石橋よりもはるかに頑丈に作る必要があったのです。
 通潤橋は、絶対壊れずに、一滴の水も漏らさない、という考えで作られています。

  通潤橋の解剖図


通水管 長さ約127m。石をくりぬいた1尺(30cm)四方の函渠(圧力のかかる管水路)。函内流速は0.64m/s
管と管の繋ぎ目には、振動吸収と漏水防止のための漆喰(しっくい)が塗られている(930ケ所)
また、通水管には5〜6ケ所に地震対策のための板がはさんである。緩衝材のはしり? →詳 細
漆喰 八斗漆喰:石灰、粘土、松脂、塩、酒!等を試行錯誤で配合したもの。
これを真面目な人夫が丹念に詰めた結果、通潤橋は120年間、漏水もなく機能してきた。
昭和58年に通水管の補修工事が行なわれたが、わずか10年で漏水が発生してしまったそうだ。
放水口 普段は木栓で蓋がしてあり、通水管の圧力が異常に高くなると、自動的に栓がはずれ、
安全弁の役割をはたす。有名な放水は、通水管内に貯まった土砂を掃除する保守作業。→詳 細
輪石 迫り石(せりいし)とも云う。アーチを形づくる部分の石(厚さは目測で1mくらい)
ちなみにアーチ中央(最上部)の輪石は、要石(かなめいし)と呼ばれる
鎖石 くさりいし:石垣の石が外にはみ出るのを防ぐ工法。アンカー工法のはしり?
石と石を鉄の棒で連結してある。上部(振動と土圧を受ける)28ケ所に設けられている
さや石垣 輪石の基礎部分を補強するために、外側から石垣で包み込む工法
刀のさやに仕組みと外見が似ていることから命名されたらしい →詳 細
袖石垣 熊本城の石垣からヒントを得たと言われる、橋の両岸部分をすそ広がりにして強度を増す工法
法勾配(のりこうばい)の決め方、石積みが極端に難しくなる(なんと丁張りなしですよ!)
裏詰め石 丸石ではなく選別した割栗石(わりぐりいし)を用い、二重石垣に似た積み方をしている

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