圦ノ上堰

 所在地:鴻巣市常光(じょうこう)、元荒川右岸  建設:1905年

 圦ノ上堰は、常光中落が元荒川の右岸へ合流する地点に設けられていた煉瓦造りの堰である。
 煉瓦造りで改修されるまでは木造であったが、明治35年(1902)8月に洪水で大破し、
 急遽、木造で復旧した記録が残っている(埼玉県行政文書 明2496-3)
 この復旧から、わずか1年後に再び大破している。
 圦ノ上堰は使用煉瓦数34,000個、2門なので(→文献1、p.40)、中規模の構造物であった。
 現在はコンクリートで全面改修されていて、旧堰に使われていた石材が残るのみである。
 常光中落は農業排水路で、元荒川上流の宮地堰で取水した、かんがい悪水を元荒川に放流する。
 現在の施設の機能と設置場所から圦ノ上堰は取水堰ではなく、水位調節かつ逆水除の堰であったと思われる。

 1905年に圦ノ上堰は常光村に建設されたわけだが、その3年前には上流の鴻巣町と
 常光村(同じ村の上流地区)では、全国の耕地整理事業の先駆けとも云える大規模かつ先進的な
 耕地整理を完了している。この耕地整理事業に対して、下流側に位置する常光村及び
 中丸村(現.北本市)、加納村(現.桶川市)は再三に渡り、北足立郡の郡長に向けて
 中止を求める陳情請願をおこなっている(→文献53、p.189、196)。耕地整理によって上流地区の排水が
 改善されると、上流からの悪水が一気に流下することを懸念したのである。
 圦ノ上堰は悪水の一気流下を制御する目的で設置されたのであろう。

 圦ノ上堰の遺構
↑圦ノ上堰の遺構 (旧流路の下流左岸側から)
 常光中落の末端、元荒川の右岸側には、
 東部都市下水路の調整池が設けられている。
 調整池の脇には2箇所にベンチが設置されているが、
 これが圦ノ上堰に使われていた石材(門柱部分だと
 思われる:寸法は
140×29×32cm)である。
   現在の圦ノ上堰
  ↑現在の圦ノ上堰 (上流から)
   手前が圦ノ上堰(平成5年竣工、元荒川上流土地改良区が管理)、
   奥が常光樋管。常光樋管から50m下流が元荒川の右岸堤防。
   圦ノ上という名称は悪水圦(現.常光樋管)の上流側に
   位置することから命名されたのであろうか。
   圦ノ上堰は2段式のローラゲート1門(幅3.45m、高さ3.6m)

戻る:埼玉県の煉瓦水門 鴻巣市の煉瓦樋門:[三ッ木堰][宮地堰][笠原堰][笠原樋[圦ノ上堰]