変則積み

 ほとんどの樋管はイギリス積みで、構造部分の煉瓦が組まれているが、
 翼壁の天端付近だけイギリス積みではなく、長手の縦で積んだ変わった樋管が存在する。
 本HPでは、この積み方を変則積みと呼ぶことにする。
変則積みをした樋管は、埼玉県には9基現存する。
 最古は、米ノ谷樋管(1897年、埼玉県初の箱型樋管)、最新は、小剣樋管(1914年)である。
 変則積みは、米ノ谷樋管を除き、 荒川水系に残っている(都幾川5基、新河岸川3基)。
 なお、通水断面は大小合併門樋(1898年)以外は、箱型である。
 変則積みにした目的は不明だが、芋目地が発生してしまうことが大きな欠点である。 
 明治36年(1903)に都幾川周辺に建設された4基の樋門は、地元の業者が建設を請け負い、
 煉瓦は東京府の職人が積んでいるが(埼玉県行政文書 明2496-7)、目地が平行になっていなかったり、
 目地幅が一定でないなど、積み方は粗雑かつ稚拙である。

変則積みとイギリス積み

 天端の煉瓦積み

 該当する樋管

新田圦樋
↑ 変則積み
1段
小口縦
大小合併門樋(志木市、新河岸川(旧堤) 、1898) 、
アーチ、歯状装飾
2段
小口縦-長手横
米ノ谷樋管?(杉戸町、中川、1897)、箱
高畑樋管(東松山市、都幾川、1903)、箱、塔
奈目曽樋管(東松山市、都幾川、1903)、箱、塔、刻印煉瓦
前樋管(東松山市、都幾川、1903)、箱、刻印煉瓦
矢来門樋(東松山市、都幾川、1903)、箱、刻印煉瓦
小剣樋管(東松山市、都幾川、1914)、箱、塔、刻印煉瓦
3段
小口横-長手横
-長手横
北美圦樋(志木市、新河岸川(旧堤)、1899)、箱
新田圦樋(志木市、新河岸川(旧堤)、1900)、箱
落合門樋
↑ イギリス積み
9種類  多数

 変則積みでは、煩雑に感じられた天端付近だが、
 イギリス積みだと、すっきりしている。

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