縦土堤
所在地:市野川(左岸)、埼玉県比企郡吉見町江綱〜前河内
縦土堤とは市野川の左岸に残る江戸時代に築かれた旧堤防。現在はゴルフ場のクラブハウスへの
進入道路となっているが、吉見町江綱と前河内の境界に沿って約500mに渡り、堤防の形が
はっきりと残っている。呼称はまちまちで、地元の古老はタツ土手と呼んでいるが、
吉見町史(下巻、p.664)の横見郡治水要図には縦土堤と表記されている。
また、武蔵国郡村誌の横見郡江綱村(6巻、p.476)には立堤(たつ)と記されている。
”村の北方より起り南方に至て大囲堤に続く 長八町十五間 馬踏一丈堤敷九間
水門一ケ所 修繕費用は官に属す”。以上、郡村誌からの引用。
馬踏(天端幅)が一丈(約3.0m)、堤敷が九間(約16.4m)なので、かなり大きい堤防である。
ちなみに江綱村の大囲堤(市野川の左岸堤防)は、縦土堤とまったく同じ規模である。
なお、水門一ケ所とあるのは、縦土堤に伏せ込まれた諏訪用水(現在は市野川用水)の樋管だと思われる。
縦土堤は典型的な村囲みの控堤であり、その形式は横堤型(本堤に対して直角に
堤内地(住宅地の側)に向かって延びたもの)である。この付近は昔は水防重点地域だったので、
二重の堤防(二線堤)を築き、洪水に対する防御をしていた。
↑縦土堤(東から) 吉見町前河内 平面形状が真っ直ぐな築堤ではなく適度に蛇行している。 水田との比高は約2.5m。 |
↑縦土堤(北から) 吉見町前河内〜江綱 奥に見えるのがゴルフ場のクラブハウスと市野川。 天端は幅が約6mの道路になっている。敷幅は約15m。 |
←縦土堤(北から) 吉見町江綱 写真の奥に見えるのが市野川の左岸堤防。 河川敷内にはゴルフ場が広がる。 縦土堤は手前から奥に延びて、左岸堤防に すり付いている。かつて、すり付き先には 江綱門樋(明治27年竣工)という煉瓦造りの 水門が設けられていたが、面影はみじんもない。 また、この付近には万蔵院という修験道の お堂があったそうだが、現在は万蔵院大明神の 石祠が堤尻に残るのみである。 |