市野川用水

 撮影地: 埼玉県東松山市、比企郡吉見町

 市野川用水は市野川の諏訪堰から取水し、東へ向かって流れる。一旦、横見川
 合流してから、横見川の下流に設けられた五反田堰で堰上げして、再び取水されている。
 かんがい地域は吉見町の南端の江綱、前河内、大串地区である。
 市野川用水の悪水は、南吉見排水機場などから再び市野川へ排水されている。
 なお、市野川用水は武蔵国郡村誌(明治9年の調査を基に編纂)の横見郡江綱村(6巻、p.467)には、
 諏訪用水と記されている。”深処一尺広処五間狭処八尺 村の西隅字諏訪堰より来り
 東方前河内村に入る 其間十七町 全村の用水に供す”とある。

 取水堰
↑取水堰(諏訪堰?) 市野川の右岸下流から
 左岸:吉見町南吉見、右岸:東松山市古凍(ふるこおり)
 転倒ゲート4門、写真右上に
 市野川用水の取水樋管が見える。
   市野川用水の始点
  ↑市野川用水の始点(上流から) 
   吉見町南吉見(市野川の左岸堤防から撮影)
   市野川用水の右岸側には市野川の氾濫跡と
   思われる諏訪沼がある。

 市川用水
↑市野川用水(下流から) 吉見町江綱(えつな)
 始点から600m下流の地点。いまどき珍しい素掘りの
 用水路が残っている。水路幅は約10mと広い。
 水際には樹木が繁茂し、独特の景観を醸し出している。
 左岸には流川耕地からの悪水が永府門樋(1901年竣工、
 煉瓦造)を経由して放流されている。付近に祀られた、
 
庚申塔は慶安元年(1648)建立と、かなり古い。

   
横見川へ合流
  ↑横見川へ合流(上流から) 吉見町江綱〜南吉見
   手前が市野川用水、奥が横見川。市野川用水は
   横見川の左岸側に設けられた樋管から再取水されて
   いる。水利的には交換用水に相当すると
   思われる。なお、横見川の左岸堤防は現在は
   県道345号線であるが、その前身は江戸時代に築かれた、
   吉見領大囲堤(市野川の控堤防)である。

 元巣神社の付近
↑元巣神社の付近 吉見町江綱
 横見川から800m下流。市野川用水の水路幅は約1mと
 狭くなる。江綱と前河内の境界付近に鎮座するのが、
 元巣神社(江綱神社)。関東には一社しかないという。
 元巣という名前から命乞いの祈願(徴兵忌諱)が
 多かったために、帝国主義の時代には、
 江綱神社へ改名させられた歴史を持つ。 

   市野川用水の流末
  ↑市野川用水の流末(上流から) 吉見町大串
   市野川用水の流末やかんがい排水は、写真手前の排水路へ
   集められ、南吉見排水機場(右上)から市野川の左岸へ
   放流されている。排水機場の前は自然排水方式の
   樋門であり、大前門樋(昭和4年竣工)という名前であった。
   明治27年には大前門樋は江綱門樋(現存せず)と一緒に
   当時最先端の形式である煉瓦造りで建造されている。

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