越辺川の冠水橋   〜 埼玉県の冠水橋分布図 〜

 越辺川(おっぺ)は、埼玉県入間郡越生町の越上山(おがみ、標高566m)を源流とする延長約35Kmの
 荒川水系の一級河川。越生町
(おごせ)から毛呂山町(もろやま)、鳩山町、東松山市、坂戸市へと
 蛇行を繰り返しながら東へ向かって流れ、川島町と川越市の境界付近で、
入間川に合流する
 入間川は川越市で荒川と合流して、最終的に荒川は東京湾に流れ込む。
 越辺川の主な支川は上流から、毛呂川、鳩川、高麗川、都幾川、飯盛川、小畦川である。
 越辺川の中流部、石今橋の付近(鳩山町石坂〜坂戸市今西)では、約1.5Kmにわたって、
 霞堤(古い形態の不連続な堤防)が見られる。

 下流部の約10kmの区間には冠水橋が3基残っている。冠水橋とは、大雨などで河川が増水すると、
 水没し通行不能になってしまう橋のこと。埼玉に特有な呼称であり、一般的には潜水橋や沈下橋の方が
 認知度が高い。 越辺川の冠水橋は見た目はどれも、木造の桁橋(木製の桁・橋脚による橋)であるが、
 補修や改修を繰り返した結果、主桁はH形鋼に交換されている。
 橋の上流側の側面には、流木よけと呼ばれる斜めの木材が設けられているのが特徴である。
 橋面が板張りなので渡るとギシギシと音をたてるが、今時の橋では体験できないので、
 かえって新鮮だ(笑)。ちなみに冠水橋の地元での呼び名は、ガタガタ橋である。

 これらの冠水橋は渡しが起源である。水運が盛んであった頃(大正時代末期まで)、
 越辺川には河岸場(荷降しのための船着場)や渡し(渡船)が数多く存在した。
 例を挙げると、
島田橋の周辺:島田の渡し、赤尾落合橋の周辺:長楽河岸、落合の渡し、
 八幡橋の周辺:中川河岸、八幡の渡し である。冠水橋の名が渡しに由来しているのがわかる。

 なお、1997年頃まで、最下流部の川島町角泉かくせん:入間川への合流付近)地区にも、
 2基の冠水橋(第一釘無橋、第ニ釘無橋)があったが、釘無橋の架橋に伴い、現在は撤去されている。
 また、現在は永久橋だが、天神橋は昭和53年(1978)まで木橋(冠水橋だったかは不明)、
 道場橋は昭和56年(1981)まで木造の冠水橋だった。

 
島田橋←2.0→赤尾落合橋←0.7→越辺川水管橋←0.6→天神橋←2.0→八幡橋←1.2→道場橋←1.5→落合橋←1.5→釘無橋←0.5→入間川(距離:Km)

(注)本ページの画像は、Nikon COOLPIX 995 (334万画素)で撮影しました。
 2001年時点での記録なので、橋の諸元や通行規制は変更されている可能性があります。


島田橋  島田橋  - 周辺の風景 -
 左岸:東松山市宮鼻(みやはな)、右岸:坂戸市島田
 右岸上流から (F6.0,40mm)


 全長約77m(歩測)、幅2.6m、桁下高3.0m、欄干(地覆)高0.3m
 桁(木+H形鋼)、橋脚(木製11本)、流木よけ(木製)、橋面(木製)

 越辺川の終点から10Km上流にある冠水橋。
 国道407号線の高坂橋から下流へ600mの地点に位置する。
 時代劇に出てきそうな素朴な木の橋である。島田橋の右岸側の
 堤防裾には、水神宮や庚申塔などの古い石仏が数多く立ち並ぶ。
 越辺川の水量が少ないのは、島田橋から300m上流に農業用水の
 取水堰(固定堰)があるため 。1.2km上流では
高麗川
 越辺川へ合流している。

 - 島田橋の詳細 -

赤尾落合橋  赤尾落合橋(あかおおちあい)  - 周辺の風景 -
 左岸:東松山市早俣(はやまた)、右岸:坂戸市赤尾
 右岸上流から (F6.6,150mm)


 全長約70m(歩測)、幅2.0m、欄干なし
 桁(木+H形鋼)、橋脚(木製8本
、流木よけ(木製)、橋面(木製)

 都幾川が越辺川へ合流する付近に設けられた冠水橋。
 写真の左端、赤尾落合橋の左岸側が都幾川の合流点。
 都幾川にも冠水橋、
長楽落合橋が架けられている。橋名の落合とは、
 川と川の合流地点のことを指す。
小山川と男堀川の合流地点でも、
 これと似た形態の2基の冠水橋が見られる。
 首都圏でありながら、この空間だけは時間が止まったままだ。
 情緒たっぷりの懐かしい景観を堪能できる。

 - 赤尾落合橋の詳細 -

八幡橋  八幡橋  - 周辺の風景 -
 埼玉県坂戸市小沼
 左岸堤防から (F7.2, 50mm)


 全長約65m(歩測)、幅2.9m、欄干(地覆)高0.25m
 桁(木+H形鋼)、橋脚(木製8本
、流木よけ(木製)、橋面(木製)

 写真上部が越辺川の右岸堤防。堤防間の距離は約300m。
 越辺川は河川改修の結果、現在は真っ直ぐ流れているが、
 かつては八幡橋の周辺では、約300m毎に蛇行を繰り返して
 流れていたようだ(市町村界に現れている)。
 八幡橋のすぐ下流には、出丸堰(農業用水)が設けられている。
 流れが奏でる軽快な音と落水が創り出す華麗な形が楽しめる。
 周辺には河畔林が広範囲に分布し、豊かな自然が残っている。

 - 八幡橋の詳細 -

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