野通川の古レール・アーチ橋
場所:野通川、埼玉県北埼玉郡川里町
形式:鋼アーチ橋(古レール使用、上路式、1スパン、欠円アーチ) 建設年は不明
川里町の野通川(起点から5Kmの区間)には、古レールを使ったアーチ橋が4基ある。
これらは、川里町の橋梁台帳では建設年不明となっているが、以下の3点から、
埼玉県がおこなった元荒川支派川改修事業で、昭和8年(1933)頃に建設されたものだと思われる。
(1)上記事業の竣功記念碑には、野通川を約14Km(起点〜終点に相当)にわたって改修したとある。
(2)同じく、関係町村として、川里町の母体となった屈巣村、廣田村、共和村の名が刻まれている。
(3)橋のデザインや施工状態は、酒巻導水路の古レールアーチ橋(昭和7年に建設)とほぼ同じである。
これらのアーチ橋は、交通量が少ないことが幸いしてか、建設当時の形態をとどめているようだ。
(2188号橋以外は、路面が舗装され地覆も打ち直されているが)
床版はスラブ(一枚の板)ではなく、20cm程度のコンクリート板を並べ、隙間にモルタルを詰めた構造。
アーチリブは3本(2188号橋のみ2本)で、長さ約11mの古レールを曲げ加工してある。
アーチ脚部の支持形式は、2ヒンジ(2188号橋、2119号橋)、両端固定(3145号橋、3147号橋)である。
なお、野通川の起点付近の県道32号には、昭和初期の建設と思われる三段地野橋が架かっている。
(アールデコ調の欄干が付けられたコンクリートの桁橋)
一方、2119号橋と3145号橋の間(関新田地区、川里中学校の付近)にも、同時期の建設と思われる
古い橋が2基ある。(形式は桁橋。床版、橋台はコンクリート製だが、桁は木製)
橋の重要度に応じて、形式を選定していたようである。重要度の高い順に、コンクリート、レール、木だろうか。
(注)本ページの画像は、Nikon COOLPIX 995 (334万画素)で撮影しました。
町道2188号線1号橋 (下流から) 場所:川里町北根 規模:橋長10.5m、有効幅1.9m、地覆0.15m 野通川の起点(小針落し伏越)から1.5Km下流、 明神橋と東間橋(あずま)の間に位置する。 最も建設当時の形態をとどめている橋。 使われている古レールの製造元は判読できない。 (刻印の存在は確認できるが、磨耗と錆が激しい) レールの断面寸法は、3147号橋とほぼ同じなので、 ヨーロッパ系の60ポンドレールであろう。 |
町道2119号線1号橋 (通称.高橋、下流から) 場所:川里町広田 規模:橋長10.5m、有効幅2.7m、地覆0.2m 2188号橋の700m下流、 金剛坊橋(県道313号線)と谷畑橋(やはた)の間に位置する。 この付近は川里町役場から南東1Kmで、民家もわりと多い。 野通川は、見沼代用水(上星川、写真右方向1.5Km)と 元荒川(写真左方向1.5Km)の間を流れる。かんがい悪水 (田んぼで使った水)が流れ込んでいる。 この橋に使われている古レールは、磨耗と錆が激しく、 刻印は確認できない。しかし断面寸法は大きく、 八幡製鉄所の75ポンドレールよりも背が高い。 |
町道3145号線2号橋 (通称.上会下橋、上流から) 場所:川里町上会下(かみえげ) 規模:橋長10.5m、有効幅2.6m、地覆0.15m 川里中学校の南東1.2Km、鴻巣カントリークラブの東側に隣接。 鴻巣カントリークラブは、屈巣沼の跡地に建設されたゴルフ場。 コース内には池が多く、池同士が水路で連結されているのが特徴。 写真の右上に見えるのは、下流にある3147号橋。 橋の両岸には、広大な水田が広がる。 この橋は農道橋としての役割が大きいのだろう。 (周辺で見かける車輌はというと、農業機械と営農サンバーばっかり) 3145号橋に使われている古レールは、八幡製鉄所(1907年製、75ポンド)。 |
町道3147号線2号橋 (右岸下流から) 場所:川里町上会下 規模:橋長10.5m、有効幅2.5m、地覆0.2m 3145号橋の下流250mに位置する。 右岸側は鴻巣市郷地で、南西1.8Kmには 埼玉県運転免許センターがある。 この橋は他の3橋とは異なり、縦桁にも古レールが使われている。 使われている古レールは、年代の古い物(断面寸法が小さい)で、 ウニオン(独、1885年製)、バーロー(英)、キャンメル(英) 。 |