小山川 (間瀬川の合流からJR八高線まで) [小山川のページ一覧]
撮影地:埼玉県本庄市(旧児玉郡児玉町)、美里町
この区間は身馴川(小山川)が郡界となっていた。左岸が児玉郡、右岸が那珂郡(明治29年に児玉郡へ編入)。
(1)間瀬川の合流(下流右岸から) 右岸:児玉町元田(げんだ)、左岸:児玉町小平 県道287号線の北側では、小山川の右岸へ間瀬川が 合流する。合流地点の護岸には練り石積みである。 間瀬川は間瀬峠(馬背峠)の付近から流れ出す延長 約3Kmの一級河川。県道287号線は間瀬川の左岸に 沿って、長瀞町野上下郷に至り間瀬峠を越える。 合流地点には[準用河川 間瀬川終点 埼玉縣]と 刻まれた標石が設置されている。小山川の支川と 2次支川には、この形式の標石が起点と終点に 設置されている事例が多い。 |
(2)秋本橋の付近(上流から) 左岸:児玉町高柳、右岸:児玉町小平 写真(1)から300m下流。写真は秋本橋の上から撮影。 県道44号線(写真の上部)と県道287号線を結ぶのが 秋本橋。この付近は元田、高柳、小平の境界と なっている。小山川の右岸側にはわずかに低地が広がるが、 左岸側は丘陵であり、写真のように崖下を県道44号線が 通り抜けている。左岸の山の中腹にある高柳の長泉寺は 古刹であり、武蔵風土記稿によれば、永正年間年間 (1510年頃)の開基である。境内の骨波田の藤(県指定 天然記念物)は樹齢が約650年だという。 |
(3)小平川の合流(下流右岸から) 右岸:児玉町小平、左岸:児玉町長沖 写真(2)から1.5Km下流。写真の左端が小平川、中央が 小山川。ここにも標石(小平川終点)が設置されている。 写真(2)の500m下流付近から、小山川は山地を抜け、 平野部へ出る。築堤がなされ、河川敷には遊歩道が 整備されている。左岸の長沖にある恵日寺は本尊が 十一面観音である。この変化観音は小山川の周辺に 非常に多く分布していたのだが(注1)、理由は不明だ。 右岸の小平には、山の中腹に成身院がある。 その百体観音堂は、さざえ堂と称され、外観は2層だが 内部は3層の螺旋構造となっている。天明三年(1787)の 浅間山噴火の死者を弔うために、寄付を集めて建立された。 門前には景観に調和した芭蕉の句碑が建てられている。 さざえ堂は児玉三十三観音霊場の第一番札所である。 ちなみに三十三番札所は、大光普照寺(神川町ニノ宮)。 |
(4)秋平橋の付近(上流から) 左岸:児玉町金屋、右岸:児玉町秋山 写真(3)から500m下流の付近。両岸の堤防には桜の木が 延々と続いている。いわゆる、[こだま千本桜]である。 昭和29年まで、この付近は小山川の左岸側が金屋村、 右岸側が秋平村だった。県道287号線の旧道には 大正時代に設置された金屋村と秋平村の道路元標が 今も残っている。同時期に有志や青年団によって設けられた 道標(道しるべ)も路傍に数多く残っている。 右岸の秋山に鎮座する河原神社は、旧秋山村の村社だが、 祭神は河原太郎である(武蔵国郡村誌)。武蔵風土記稿では 河原明神社であり、河原次郎を祀り、風洞(秋山地区のうち、 小山川の沿線)の河原明神社に河原太郎を祀るとなっている。 河原兄弟とは、一の谷の合戦で討ち死にした坂東武者で、 行田市南河原に居を構えていた。菩提寺である照岩寺(行田市 北河原)には供養塔と位牌がある。 |
(5)秋山川の合流(下流右岸から) 児玉町児玉 写真(4)から1.3Km下流、左端が秋山川、右が小山川。 秋山川の川幅は10m程度だが、深さは4m位ある。 ここにも標石(準用河川 秋山川終点)が設置されている。 秋山川は十二天池(農業用のため池)を水源とする、 延長約2.5Kmの一級河川。管理起点は秋山橋の脇に 設置されている。秋山橋は昭和9年(1934)竣工の古い橋。 秋山川の沿線には秋山古墳群が分布し、ため池も多い。 |
(6)JR八高線の身馴川橋梁(上流から) 左岸:児玉町児玉、右岸:美里町広木 写真(5)から900m下流、JR八高線が身馴川橋梁で小山川を 横断する。500m上流には身馴川橋(国道254号線)が 架かっている。身馴川橋の付近は鎌倉街道上道の 渡河地点(陣街道)だった。身馴川橋の右岸、 国道254号線の脇には広木の一里塚跡がある。 その東側には広木大町古墳群が分布している。 |
(注1)十一面観音を本尊とする寺社、堂宇 (新編武蔵風土記稿から作成)
郡名 | 村名 | 寺社 | 山号 | 本山、持ち | 補足 | 出典 |
秩父郡 | 金沢村 | 観音堂 | 正法寺 | 興教大師の作 | 12巻p.140 | |
児玉郡 | 中稲沢村 | 慈眼寺 | 蓮華山観音院 | 新義真言宗、金屋村、淵龍寺 | 12巻p.21 | |
下稲沢村 | 観音堂二宇 | 〃p.21 | ||||
元田村 | 宝冠寺 | 玉宅山宝蔵院 | 新義真言宗、金屋村、淵龍寺 | 〃p.21 | ||
長沖村 | 恵日寺 | 大聖山 | 禅宗臨済派、広木村、大興寺 | 〃p.26 | ||
金屋村 | 円通寺 | 大光山昌光院 | 新義真言宗、金屋村、淵龍寺 | 〃p.24 | ||
〃 | 大光寺 | 金剛山 | 新義真言宗、金屋村、淵龍寺 | 〃p.24 | ||
飯倉村 | 法性寺 | 飯倉山地下院 | 新義真言宗、小平村、成身院 | 〃p.18 | ||
入浅見村 | 観音寺 | 金鑽山 | 新義真言宗、栗崎村、宥勝寺 | 〃p.4 | ||
十条村 | 慈淵院 | 新義真言宗、小茂田村、勝輪寺 | 〃p.4 | |||
那賀郡 | 小平村 | 光西寺 | 龍鳳山 | 禅宗曹洞派、高柳村、長泉寺 | 13巻p.315 | |
風洞 | 普賢寺 | 龍光山観音院 | 新義真言宗、小平村、成身院 | 秋山村枝郷 | 〃p.314 | |
白石村 | 宗清寺 | 金井山 | 禅宗曹洞派、広木村、大興寺 | 〃p.310 | ||
猪俣村 | 正円寺 | 猪俣山歓喜院 | 新義真言宗、針ケ谷村、弘安寺 | 〃p.301 | ||
〃 | 高台院 | 松久山明王寺 | 新義真言宗、針ケ谷村、弘安寺 | 猪俣氏が開基 | 〃 | |
児玉郡 | 下野堂村 | 聖天社 | 本地 | 杉山村日輪寺 | 13巻p.332 | |
元仁手村 | 宋福寺 | 諏訪山 | 宋真院 | 〃p.328 | ||
西五十子村 | 観音堂 | 〃p.326 | ||||
東五十子村 | 雷電社 | 本地 | 増国寺 | 〃p.325 | ||
〃 | 増国寺 | 雷雲山 | 禅宗曹洞派、上野国白井村雙林寺 | 〃 | ||
本庄宿 | 円心院 | 要行山先求院 | 浄土宗、鴻巣宿、勝願寺 | 行基の作 | 〃p.322 | |
榛沢郡 | 榛沢新田村 | 天神社 | 本地 | 13巻p.266 | ||
榛沢村 | 御霊社 | 本地 | 泉蔵院 | 榛沢六郎が勧請 | 〃 | |
沓掛村 | 熊野社 | 本地 | 妙権寺 | 〃p.264 | ||
牧西村 | 慈眼寺 | 宝珠寺 | 〃p.263 | |||
宮戸村 | 観泉寺 | 八幡山無量院 | 新義真言宗、世良田村、惣持寺 | 〃p.262 | ||
岡村 | 聖天社 | 本地 | 岡林寺 | 〃p.260 | ||
〃 | 岡林寺 | 金蓮山観音院 | 新義真言宗、本郷村、東陽寺 | 〃 | ||
下手計村 | 常学院 | 当山修験、酒巻村、酒巻寺 | 〃p.257 | |||
普済寺村 | 普済寺 | 玉龍山 | 禅宗曹洞派、岡部村、源勝寺 | 岡部六弥太が開基 | 〃p.254 | |
中瀬村 | 観音堂 | 〃p.250 | ||||
成塚村 | 宝蔵寺 | 蔵王山 | 新義真言宗、京都智積院 | 〃p.248 |
(補足)児玉郡では金屋村の淵龍寺の末が多いが、淵龍寺の本尊は虚空蔵(菩薩)である。