葛西用水 (かさい ようすい) (その3) (その1)(その2)(その4) [葛西用水のページ一覧]
撮影地:埼玉県幸手市、北葛飾郡杉戸町
琵琶溜井(久喜市栗原四丁目〜幸手市南二丁目)から分水している幸手領(主に幸手市と
杉戸町の区域)の用水路が、中郷用水路と南側用水路である。これに川口分水工(加須市川口)から
取水している北側用水路を合わせて、幸手領の三用水と称している。
不思議なことに近年まで、幸手領の用水路には、それぞれ独立した土地改良区(農業用水や施設を
管理する団体)が存在していた。北側用水土地改良区、中郷用水土地改良区、南側用水土地改良区、
権現堂川用水土地改良区である。昭和47年(1972)に北側用水土地改良区は
葛西用水路土地改良区と合併し、昭和58年(1983)には他の3改良区も葛西用水路と合併している。
(1)中郷用水路
中郷用水路は琵琶溜井から南東へ向かって流れ、杉戸町のほぼ南端、本郷地区の付近まで続いている。
幸手領の中郷(幸手市上高野、吉野、平須賀、杉戸町戸島、並塚、才羽、佐左衛門など)を
かんがいする。流路は上流部は県道318号線の西側に沿い、下流部は安戸落と倉松川の間にある。
中郷用水路で田んぼに供給された用水は、使われた後は主に安戸落と倉松川へ排水され、
最終的には中川へ落ちる。なお、中郷用水路は幸手領の三悪水路(神扇落、安戸落、倉松落)の
うちの2つ(安戸落、倉松落)の下を伏越で横断している。
倉松落付近の中郷用水 (上流から) 幸手市吉野 水路幅は3.0m。奥に見える林(白百合学園の 自然観察園)の付近に倉松川が流れている。 ここから200m北、栄中学校の東側にある三光院には、 弘化五年(1848)と嘉永四年(1851)建立の2基の 石橋供養塔が祀られている。中郷用水に架けられていた、 石橋を供養したものだろう。 |
上戸前伏越 (上流から) 幸手市吉野 中郷用水は上戸前伏越で倉松川の下を潜って横断している。 手前が伏越の呑み口、奥が倉松川。上戸前伏越は昭和7年(1932)に 上戸掛樋井(水路橋)として建設されたが、倉松川(当時、この付近は 大中落)の改修に伴い、昭和14年には形式が伏越へと改められている。 吉野橋(倉松川)の左岸に隣接する幸手領第二揚水機場の脇には、 それら2つの竣工記念碑が建っている。 |
安戸落付近の中郷用水 (上流から) 杉戸町佐左衛門 水路幅は3.0m。倉松公園から東へ800mの地点。 写真の奥が幸手領第三揚水機場で、その脇に安戸落が 流れている。周辺には広大な水田地帯が展開している。 その田んぼに水を供給しているのが中郷用水。この付近 には佐左衛門のように人名を冠した地名や橋が多いが、 これは江戸時代の新田開発者に由来するのだろう。 |
安戸落伏越 (下流から) 杉戸町佐左衛門 幸手領第三揚水機場の脇。中郷用水は安戸落伏越で 安戸落の下を横断している。手前が安戸落、奥は伏越の余水吐。 増水時などに用水路で送水しきれない水は、余水吐を経由して、 安戸落へ放流される。なお、安戸落伏越は明治時代には 当時の最先端の様式である煉瓦造りで改良されている。 伏越の吐き口側には、その竣工記念碑が建っている。 |
(2)南側用水路
南側用水路は現在はパイプライン化され(昭和63年竣工)、地下を流れているので、水の流れを
目にすることはできない。ただし、旧南側用水路(開水路)の大半はまだ残っている。旧水路の路線は、
ほぼ古利根川の左岸の微高地(自然堤防)にあり、上流部は日光御成道(県道65号岩槻幸手線)の
東側に沿い、中流部は鎌倉街道中道に沿って、下流部は日光街道(国道4号線)の西側に沿っている。
南側用水路は幸手領の南側(杉戸町下高野、清地、倉松、堤根、本郷など)をかんがいしている。
南側用水路で田んぼに供給された用水は、使われた後は主に倉松川へ排水される。
また、南側用水路の流末は古利根川と大膳堀へ落とされている。
古利根川は葛西用水の送水路なので、用水は反復利用されているわけだ。
なお、大膳堀は倉松川の支川である。
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南側用水の碑と旧ポンプ 杉戸町杉戸四丁目 東武日光線の古利根川橋梁から東へ100m、古利根川の 堤防の脇にある。旧揚水機場(現存せず)で使われていた、 ポンプと記念碑が展示されている。機場は撤去されたが、 取水樋門は今も古利根川に残っている。南側用水路には 不足する用水を補うために、昭和27年に揚水機場(ポンプ場)が 設置され、古利根川から直接、水を汲み上げていた。 展示されているポンプは、酉島製作所製の立軸軸流ポンプで、 口径1000mm、全揚程3.0m、揚水量2.33m3/s。 |
南側用水の跡 (下流から) 杉戸町杉戸五丁目 県道372号線の北側。この区間は埋め立てられ、 散策道へ変貌している。沿線には住宅団地が並んでいる。 なお、ここから500m下流の愛宕神社には宝暦六年(1756) 建立の石橋供養塔が祀られている。南側用水に架けられて いた3基の石橋を供養した碑だ。 |
大膳堀(上流から) 杉戸町倉松 南側用水と倉松川の間を並行して流れているのが大膳堀。 南側用水の排水路であり、大膳堀は倉松川へ排水している。 なお、大膳堀の上流部は市街地を流れているので、 生活排水も流入しているが、杉戸小学校の付近は河道自体が 親水公園へと整備されている。 |