前屋敷橋

 場所:忍川、埼玉県北足立郡吹上町袋(ふくろ)  建設年:不明
 形式:鋼アーチ橋(古レール使用、上路式、3スパン:3.3m、5.7m、3.3m)  
 規模:全長 16.4m、幅 3.0m、欄干高 1.4m (全長は歩測、幅は欄干を除く、欄干高は橋面から)

 前屋敷橋は忍川に架かる最後の橋で、古レールを使った三連アーチ橋である。
 忍川は、この地点から150m下流で、元荒川へ合流する。
 袋という地名は[袋状の平地]に由来するそうで、この付近は元荒川の蛇行によって形成された低地である。
 袋地区は昭和30年まで、上流の樋上、堤根地区と同じく、北埼玉郡下忍村に属していた。
 当時の
下忍村の道路元標が吹上町郷土資料館に保存されている。
 なお、橋梁名の
前屋敷とは、この付近の小字名である(→武蔵国郡村誌 第13巻、埼玉県立図書館、1955)

 前屋敷橋は、樋上1号橋と細部の構造がよく似ているが、幅員を広くするためか主桁(主構)は4本である。
 建設年は不明だが、樋上、堤根地区にある4橋と同時期(1933年)に架けられた可能性が高い。
 使われている古レールは、上記4橋とは異なり、メリーランド社のものであ
 
それも1917年(ロシア革命の年)にのみ製造された、ロシアの東支鉄道用のレールであり、
 (背が高く、断面寸法が大きいのが特徴、どういう経緯で前屋敷橋に使われたのか謎である

 (注)本ページの画像は、Nikon COOLPIX 995 (334万画素)で撮影しました。

 前屋敷橋  ←前屋敷橋(右岸下流から)

 橋桁の側面(上下流)には、水道管が布設されている。
 路面は最近、拡幅されたようである。全幅は約5m。
 前屋敷橋は忍川の古レールのアーチ橋で唯一、
 側道(歩道者専用、幅1.3m)が併設されている。
 前屋敷橋には通行車輌の規制(車幅 2.2m、重量 2.0t)が
 布かれている。

 写真上部は、JR上越新幹線。
 忍川を跨ぐ付近には、
石田堤史跡公園がある。
 新幹線の高架下には、歴史モニュメントが設置してあり、
 新幹線が上を通ると、石田三成の声(大和田伸也)が流れる!
 なお、左岸の橋詰には、猿田彦神社と
水神社(嘉永3年建立)が
 祀られている。この付近が古くから交通の要所であり、
 なおかつ利水や治水に苦労した土地であったことが偲ばれる。

 床版と橋脚
↑床版と橋脚(右岸から)
 床版のコンクリートは打ち直されている。
 路面拡幅の結果、床版は上下流へ、
 それぞれ0.5m張り出している。
 (構造はスラブ-片持ち版のようだ)
 橋脚は2連の門形ラーメン。
 アーチリブの間隔は1.05m。

  古レール

←古レール(右岸から)

古レールの組み方は樋上1号橋とほぼ同じ。
各スパンのアーチリブには、
一本のレールを曲げたものが使われている。
L字形鋼は床版の下にしか使われていない。
横桁(アーチリブと縦桁の結合点から
直交した方向の部材)も使われていない。
唯一、樋上1号橋とは異なる点は、
主桁が2本のレールをボルトで結合してあること。

    橋台とアーチの脚部




←橋台とアーチの脚部(右岸上流から)

アーチの脚部はシュー(鋼製のソケット)を介して
橋台に固定されている(ヒンジ結合)
シューの寸法は、25cm×27cmで高さ12cm。
使われている古レールは穴の開けられた物が多い。
現在は水色に塗装されているが、
以前は赤系統の塗装が施されていたようだ。

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