洋館 (その7a)_  武蔵野銀行 行田支店、新町自治会集会所、長井写真館、彩々亭、イサミ足袋工場   洋館の一覧


行田市の洋館:(おし)の城下町として知られる行田市は、江戸時代から足袋の製造が行われていたが、
 明治時代に入ると規模が拡大し、足袋産業へと発展していった(おそらく士族授産と関係が深いのだろう)。
 最盛期には全国の足袋生産量の8割を占めていたという。
 今も行田市には足袋製造と関連の深い建物が多く残っていて、古臭い街並みと共に往時を偲ぶことができる。
 ただ、城下町特有のいりくんだ道路配置と短冊型の地割のために、表通りに面した建物は少なく、
 多くの建物は裏通りに立地するので、人目に付きにくいのが残念である。
約100基存在するという足袋蔵は、
 さらに奥の路地裏に点在する。行田市は川越市と並ぶ蔵の街だが、認知度は低い。
 行田市の蔵が裏通りに点在する倉庫(白い足袋蔵)であるのに対して、川越市の蔵は表通りに
 軒を連ねる商家の店舗(江戸様式の黒い蔵)なのが対照的である。
 なお、市の中心部を国道125号線が東西に横断しているが、市役所付近から大長寺にかけての区間には、
 看板建築の店舗も数棟存在している。

 武蔵野銀行 行田支店
↑武蔵野銀行
 行田支店(旧.忍貯蓄銀行本店)
 所在地:埼玉県行田市行田4-5
 竣工:昭和初期?

 国道125号線の[新町一丁目]交差点の角地に建つ。
 ここは忍藩の高札場の跡地である。支店の建物は
 コンクリート造りだが、壁面にはタイルが貼られている。
 壁面と開口部(窓と玄関)のバランスが心地よい。
 正面の軒下に
デンティル、その下に帯状に配置した、
 植物の装飾、入口の上部には左右に
メダリオン
 端正な意匠がさりげなく施された逸品だ。
   新町自治会集会所(旧.忍町信用組合)
  ↑新町自治会集会所(旧.忍町信用組合)
   所在地:埼玉県行田市行田13付近
   竣工:大正12年(1923)

   武蔵野銀行から南東へ50m、新町一丁目バス停(県道77号線)付近の
   路地裏にある。元来は忍町信用組合(銀行)の店舗。
   表通りに面していない所に立地していた不思議な銀行だ。
   かつては新町(あらまち)自治会の集会所として使われていたが、
   現在は廃屋。ルネッサンス風の木造二階建(下見板張り)で
   屋根(スレートと瓦)と壁面の配色がなかなか瀟洒だ。
   屋根にはド−マー窓が設けられている。

 長井写真館
↑長井写真館
 所在地:埼玉県行田市行田13付近
 竣工:大正末期?

 新町自治会集会所から東へ50mほどの所にある。
 さらに東へ50m進むと行田郵便局に至る。
 木造二階建て(下見板張り)で切妻屋根には金属板。
 壁、窓枠のライン、屋根の配色がここち良い。

  足袋倉庫
 ↑足袋倉庫
  所在地:埼玉県行田市行田9付近

  竣工:大正13年(1924)
 新町一丁目交差点(国道125号線と
 県道77号線の交差点)から南へ300m、
 新町通(あらまち)に残っている。
 行田市では珍しく、表通りに
 面した蔵だが、両脇に大き目の
 建物が建っているので見つけにくい。

 これは大沢家の足袋蔵だという。
 行田市には足袋に関する蔵や
 倉庫が非常に多いが、煉瓦造は
 これのみ。建材は赤煉瓦ではなく、
 黒っぽい色の
焼過煉瓦
 
横田酒造の煉瓦塀(桜町二丁目)も
 同じような質感の焼過煉瓦である。
 これらの煉瓦は北河原村にあった、
 
武蔵煉瓦工場(明治40年操業)が
 製造したものだろうか。

 壁はイギリス積みで組まれている。
 屋根は日本瓦。壁面に水平に
 配置された花崗岩製の帯(
辰野式
 彷彿とさせる)と控壁を兼ねた
 飾り柱が特徴的である。

 彩々亭(旧.荒井八郎商店の事務所兼自宅)
↑彩々亭(旧.荒井八郎商店の事務所兼自宅)
 所在地:埼玉県行田市佐間一丁目11
 竣工:昭和元年(1926)

 水城公園の東端に位置する。
 足袋商だった荒井八郎商店の3棟の内の1つ。
 現在は和牛懐石の彩々亭となっている。木造二階建てで
 屋根には緑色の光沢のある瓦、2階はモルタルで化粧、
 1階にはスクラッチ・タイルが貼られている。

   旧.島田医院
  ↑旧.島田医院
   所在地:埼玉県行田市城南11付近
   竣工:昭和6年(1931)

   水城公園の西端から南西へ250m、大正新道沿いに建つ。
   この付近の大正新道は古くは
忍馬車鉄道の路線であった。
   旧.島田医院は木造二階建て、寄棟造(宝形造かもしれない)の
   屋根の頂部には、かわいらしい避雷針が立つ。

 足袋とくらしの博物館(旧.牧野本店の工場)
↑足袋とくらしの博物館(旧.牧野本店の工場)
 所在地:埼玉県行田市行田1-2
 竣工:大正11年(1922)

 武蔵野銀行から北西へ100mに位置する。足袋商だった
 牧野本店の工場(木造2階建て)を博物館として再利用した。
 牧野本店の敷地内には、店舗・工場・足袋蔵が残る。

   
イサミ足袋工場
  ↑イサミ足袋工場
   所在地:埼玉県行田市向町4付近
   竣工:昭和初期?

   向町公園(埼玉県繊維試験場の跡地)の北側に位置する。
   ノコギリ屋根の工場(木造平屋)、壁は下見板張り。
   行田市内には同様な足袋工場が他にも数棟ある。

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