石橋供養塔  さいたま市(その2)(その1_  埼玉県の橋供養碑


 石橋供養塔
 石橋供養塔 鴻沼川(右岸)
 埼玉県さいたま市中央区本町東4丁目

 JR埼京線の北与野駅から南西へ
 500m、赤山橋(赤山通が鴻沼川を
 渡る)の右岸橋詰に設けられている。
 赤山通は
赤山街道と呼ばれた古道。
 中山道から三室、大間木(浦和市)を
 経て、赤山陣屋(川口市にあった
 関東郡代伊奈家の居城)へと
 繋がっていた。
 享保十一年(1726)初夏建立。
 この供養塔は見沼代用水路開削の
 前年に建立されたもので、
 高さは約2.3mとかなり大きい。
 正面に導師(僧侶)と願主3名、
 側面には石橋架設に協力した、
 100以上もの村の名が刻まれている。
   石橋供養塔
   石橋供養塔 鴻沼用水路(左岸)
   埼玉県さいたま市中央区下落合3丁目

   鴻沼用水路に架かる高谷橋(こうや)の
   左岸橋詰、与野東中学の校門脇にある。
   右下に見えるのは、さいたま市
   教育委員会による説明板。鴻沼用水路は
   見沼代用水の開削(1727年)に関連して
   開発された農業用水路で、見沼代用水の
   西縁から分水している。鴻沼用水路の
   排水路が鴻沼川(霧敷川)である。
   なお、鴻沼用水路が旧中山道を
   横断する地点には
高台橋(明治期建造の
   煉瓦造りアーチ橋)が架けられている。
   宝暦六年(1756)二月建立。
   正面に上落合村の願主2名、右側面に
   施主2名と近隣の20村名、左側面には
   60以上もの村名が記されている。
   背面には石工
 与野町 山田平左エ門。   
   石橋並道普請供養仏
   石橋並道普請供養仏 国道17号線
   埼玉県さいたま市浦和区常盤九丁目12付近

   JRの北浦和駅から南へ200m、国道17号線の
   常盤九丁目交差点の歩道脇に祀られている。
   石橋と道路を同時に供養した珍しい碑である。
   この供養碑は浦和市指定史跡であり、
   現地にはさいたま市教育委員会による
   ”浦和宿石橋と供養仏”の説明板が
   設置されている。
   宝暦十二年(1762)四月建立。
   高さ95cm、幅35cm、厚さ23cm。
   正面に願主 浦和町 渡貫源兵衛、
   右側面に建立年、左側面は道標(道しるべ)を
   兼ねていて、”これより与の川越道”と記されている。
   また左側面下部には、上町世話人施主中
   勧化村々施主中 石一本施主 白幡村 金子専吉
   橋杭施主 椎名孫七とある。橋と道路の建設資金は
   周辺の村からの勧化(寄付の一種)に頼ったようである。

 石橋供養塔
 石橋供養塔 荒川(左岸)
 埼玉県さいたま市桜区塚本238付近

 県立浦和北高校から北西へ200mに
 位置する釈迦堂の入口にある。
 釈迦堂はこの地にあった西方寺の
 墓地を移転したもの。
 天明八年(1788)九月建立。
 高さ189cm、幅44cm、厚さ27cm。
 正面上部に地蔵菩薩の坐像、
 下部に石橋供養塔 塚本村。
 なお、ここから100m西には荒川の
 左岸堤防があるが、供養した石橋は
 荒川ではなく、村内の用水路に
 架けたものであろう。

   
石橋供養塔
   石橋供養塔 鴨川(右岸)
   埼玉県さいたま市桜区五関

   JA大久保支所の西側、五関会館
   (東福寺)内。敷地内には道祖神もある
   安永三年(1774)十一月建立。
   高さ193cm、幅37cm、厚さ25cm。
   正面上部に阿弥陀三尊の梵字、
   左側面に寄付金者の名前(苗字なし)、
   当村が32名、次いで下大久保村が
   15名と多い。右側面には勧化の
   69村が記されている。寄付や助力を
   した村は貝塚村や平方村(共に現在の
   上尾市)もあり、遠方まで及んでいる。
   裏面には願主2名、再興願主3名、石工
   与野町
 平左衛門、川口町 長四良

   
奉懸石橋於当村七箇所成就供養
   奉懸石橋於当村七箇所成就供養
   埼玉県さいたま市南区松本一丁目14付近

   田島小学校の東側100mに位置する真乗寺の
   境内、六地蔵の祠の脇にある。この祠の中には
   明和五年(1768)建立の普品門順礼供養塔もある。
   宝暦六年(1756)正月建立。
   高さ77cm(台座含まず)、幅30cm、厚さ18cm。
   正面上部に地蔵菩薩の坐像、
   右側面に世話人
 当村 半道勘右衛門
   十?施主 二世安楽、左側面に武州足立郡
   笹目領松本村
 願主 和南と記されている。
   村内に7基の石橋を架けたのを記念し、
   それらを供養した塔である。

 奉新造立石橋供養為二世安全
 奉新造立石橋供養為二世安全
 天久保用水(左岸)
 埼玉県さいたま市緑区下野田、円徳寺

 東北自動車道の浦和I.Cから東へ300mに
 位置する円徳寺の入口に祠に祀られている。
 脇には馬頭観音、庚申供養塔、地蔵、
 巡礼供養塔など7基がある。
 天久保用水は
見沼代用水の東縁から
 分水する農業用水路。

 宝暦七年(1757)十一月建立。
 高さ91cm、幅31cm、厚さ16cm。
 正面上部に地蔵菩薩の坐像と種子。
 庚申待講中 念仏講中
 下野田村 願主 敬白
 

(補足)さいたま市に存在した石橋
 武蔵国郡村誌の足立郡(1、2、3巻)から、現在のさいたま市の区域に存在した石橋を集計したのが、
 下記の表である。郡村誌は明治9年の調査を基に編纂された。標目数が多いうえに記述も詳細で、
 極めて優れた書である。しかし、あくまでも村誌であり橋梁の悉皆調査書ではない。
 実際に存在した石橋の数は、下記の集計(合計74基以上)よりも、もっと多かったはずである。

町村名 橋名 記述内容 ページ
大門町 石橋 縄手道に属し町の東北 伝右川の下流に架す 長四間巾一間 285
中野田村 村道に属し村の東端 用水の下流に架す 長九尺巾六尺 325
下野田村 野道に属す村の中央 天久保用水の上流に架す 長七尺巾一間 329
野道に属す村の中央 天久保用水に架す 長七尺巾一間  
代山村 弁天脇橋 村道に属す村の中央 用悪水の下流に架す 長六尺五寸巾四尺五寸 344
後谷つ橋 村道に属す村の中央 用悪水の下流に架す 長六尺五寸巾四尺五寸  
堀崎村 上橋 岩槻道に属し村の中央 間堀の中流に架す 長六尺巾五尺 385
門前村 龍ヶ谷橋 岩槻道に属し村の南方 悪水の下流に架す 長六尺巾五尺 397
両換橋 岩槻道に属し村の南方 悪水に架す 長五尺巾四尺  
大谷村 岩槻道に属し村の北方 用水の下に架す 長九尺巾四尺 403
瀬ヶ崎村 村道に属す村の南方 溝の下に架す 長八尺巾六尺 15
領家村 天王橋 岩槻道に属し村の西方 古芝川の上流に架す 長一間巾五尺 17
中尾村 浦和道に属す村の中央 堀の中流に架す 長一間二尺巾一間 25
村道に属す村の南方 堀の下流に架す 長一間二尺巾一間  
浦和道に属す村の中央 堀の中流に架す 長一間巾五尺  
太田窪村 二つ橋 村道に属し村の北方 用悪水の上流に架す 長一間半巾一間 50
狐橋 村道に属し村の西南隅 用悪水の下流に架す 長一間半巾一間  
浦和宿 中山道に属す宿の北方 悪水の上流に架す 長一間巾二間 58
中山道に属す宿の南方 悪水堀の上流に架す 長一間巾二間  
中山道に属す宿の南方 悪水溝の上流に架す 長一間巾二間  
文蔵村 村道に属し村の中央 見沼代用水分水の中程に架す 長八尺巾六尺 77
奥田橋 村道に属し村の東南 見沼代用水分水の中程に架す 長八尺巾六尺  
大谷場村 蕨道に属し村の南端 悪水の下流に架す 長二間巾六尺 90
本太村 金井橋 岩槻道に属す村の北方 用悪水の中流に架す 長一間半巾一間 99
馬堤橋 鳩ヶ谷道に属し村の南方 悪水の上流に架す 長一間一尺巾五尺  
曲本村 宮根橋 村道に属し村の南方 堅井堀分水の下流に架す 長四尺巾三尺 105
卯右衛門橋 村道に属し村の中央 堅井堀の下流に架す 長五尺巾四尺  
内谷村 中橋 村中道に属し村の西方 用水の中流に架す 長五尺巾四尺 109
下橋 村中道に属し村の南西 用水の下流に架す 長四尺巾三尺六寸  
  外小石橋数個あり  
井川橋 川岸道に属し村の西方 若宮悪水の上流に架す 長九尺八寸巾四尺  
大野橋 大野道に属し村の西南 中丸悪水の上流に架す 長一間一尺五寸巾四尺三寸  
松本新田 樋尻橋 中道に属し村の南方 東悪水の下流に架す 長一間半巾五尺 125
与野町 榎橋 村道に属し町の東方 悪水の上流に架す 長三間巾二間 129
小村田村 川越道に属し村の中央 小溝に架す 長一間巾四尺 133
並木村 *大橋 川越道に属し村の西方 鴨川の下流に架す 長三間一尺巾一間一尺八寸 142
*小橋 川越道に属し村の西方 鴨川の下流に架す 長一間一尺五寸巾一間  
上落合村 高谷橋道に属し村の東南 高沼用水の下流に架す 長二間巾一間三尺 145
下落合村 浦和道に属す村の中央 高沼用水の中流に架す 長二間半巾一間一尺 149
中島村 村道に属し村の東方 用水の上流に架す 長五尺巾四尺 169
村道に属す 用水の中流に架す 長五尺巾四尺  
村道に属し村の西方 小溝に架す 長五尺巾四尺  
千駄村 村道に属し村の東方 用水の上流に架す 長三尺巾四尺 174
村道に属す村の東方 用水の中流に架す 長三尺巾四尺  
村道に属す村の東方 用水の中流に架す 長三尺巾四尺  
村道に属す村の東方 用水の下流に架す 長三尺巾四尺  
西蓮寺村 村道に属す村の北方 用水の上流に架す 長五尺巾四尺 177
村道に属す村の中央 用水の中流に架す 長五尺巾四尺  
道場村 生橋 村道に属す村の南端 悪水の上流に架す 長一間三尺巾五尺 180
  外用水に架する石橋十ヶあり  
土呂村 村道に属し村の東方 悪水の中流に架す 長八間三尺巾九尺 220
村道に属し村の東方 分用水の中流に架す 長二間三尺巾九尺  
内野村 *橋 与野道に属し村の東南 悪水の下流に架す 長六尺巾六尺 232
*橋 野道に属し 悪水の中程に架す 長五尺巾四尺  
*橋 野道に属し 悪水の下流に架す 長五尺巾四尺  
上内野村 *橋 与野道に属し村の東南 悪水の下流に架す 長五尺巾六尺 235
*橋 野道に属し 悪水の中流に架す 長五尺巾四尺  
*橋 野道に属し 悪水の下流に架す 長五尺巾四尺  
下内野村 *並木橋 与野道に属し村の南少東 鴨川の下流に架す 長三間巾一間三尺 238
*並木小橋 与野道に属し村の南少東 並木橋に並架す 長一間巾五尺  
側ヶ谷戸村 *藤橋 村道に属し村の南方 鴨川の下流に架す 長四間巾九尺 247
村道に属し村の西方 用水の上流に架す 長一間巾四尺  
植田谷本村 *藤橋 村の東方 鴨川の下流に架す 長四間四尺巾一間 259
佐知川村 川越道に属す村の南方にあり 長九尺巾六尺 312
遊馬村 吾庵橋 村道に属し村の申の方 江川の中流に架す 長六尺巾四尺 320
清河寺村 光明橋 川越道に属す村の西方 悪水の上流に架す 長五尺巾五尺 329
内野本郷村 上橋 川越道に属し村の東北端 悪水の上流に架す 長六尺巾五尺 332
辻村 川越道に属し村の東南 悪水の上流に架す 長七尺巾四尺 361
吉野原村 村道に属す村の北方 悪水の下流に架す 長一間巾二間 387
今羽村 *舟橋 岩槻道に属し村の東北 悪水の上に架す 長二間巾七尺 390
加茂宮村 鍛冶橋 川越道に属し村の西方 鴨川の上に架す 長五尺巾六尺 405
天神橋 中山道に属し村の中央島屋福島屋の前 悪水溝に架す 長六尺三寸巾二間  
別所村 村道に属し村の東方 用悪水に架す 長八尺巾一間 46
奈良瀬戸村 川越道に属し村の東方 逆川の中流に架す 長四尺巾四尺 48

(注)*を付けた橋は二村に跨るもの。


戻る:埼玉県の橋供養碑  さいたま市の橋供養碑:(その1)(その2)

橋供養塔:[北川辺町][大利根町][加須市][羽生市][行田市][騎西町
 [
菖蒲町][久喜市][蓮田市][白岡町][宮代町][岩槻市][春日部市][越谷市
 [
鷲宮町][幸手市][杉戸町][庄和町][松伏町][吉川市
 [
鴻巣市][北本市][桶川市][上尾市[さいたま市]朝霞市][和光市][新座市][戸田市
 [熊谷市][妻沼町][大里町][江南町][寄居町][深谷市][岡部町] [上里町] [小川町][滑川町][東松山市][吉見町][川島町
 [
坂戸市][毛呂山町][越生町][鶴ヶ島市][日高市][飯能市][狭山市][入間市][所沢市][川越市][ふじみ野市][富士見市][志木市