石橋供養塔 (上尾市)_  埼玉県の橋供養碑


 石橋供養佛
 石橋供養佛 江川(左岸)
 埼玉県上尾市藤波二丁目、密厳院

 密厳院の境内に20数体の石仏と共に
 祀られている。ここは桶川市川田谷と
 の境で、
江川(荒川の支川)が
 上尾市と桶川市の境界になっている。
 享保十年(1725)二月建立。
 高さ121cm、幅42cm、厚さ29cm。
 願主
 自得、勧化17ヶ村
 石仏施主 藤波村女中七十三人。
 大人数の女性の講が周辺の村々
 からの寄付を得て建立したもの。
   石橋念佛講中
   石橋念佛講中  鴨川(左岸)
   埼玉県上尾中妻二丁目、宝蔵寺

   宝蔵寺の境内に無縁仏として
   祀られている。一見すると、
   如意輪観音像だが、正面に
   石橋念佛講中 ?造立 
   享保十七年 中妻村 ??五人と
   記されている。石橋供養塔なのかは
   不明である。講で石橋念佛講と
   いうものが、存在したのかもしれない。
   享保十七年(1732)建立。
   高さ53cm、幅28cm。
   石橋両所供養佛   
   右石橋両所供養佛 鴨川(右岸)
   上尾市小泉98付近、薬師堂

   薬師堂(泉乗寺跡)の敷地内に
   祀られている。
   延享三年(1746)十一月建立。
   高さ185cm(台座を含む)、台座は
   高さ41cmで幅32cm×27cm。
   台座正面に奉建立地蔵菩薩
   右石橋両所供養佛
   村々助力之善男女
 為二世安楽也
   左側面には武州足立郡石戸領
   小泉村。

 
石橋供養佛
 石橋供養佛
 埼玉県上尾市柏座三丁目、日乗院

 日乗院の門前に6体の石仏(地蔵、
 馬頭観音、庚申塔)と共に
 祀られている。この塔は石橋供養仏と
 題されているが、道標(道しるべ)を
 兼ねていて、左側面に東
 上尾宿道、
 右側面に南
 与野道 西 平方道と
 記されている。
 安永七年(1778)三月建立。
 高さ72cm、幅28cm、厚さ18cm。
 正面に柏座村 春日谷津村
 左側面には願主
 柏座村 藤右ェ門。

   三所石橋供養
   三所石橋供養
   埼玉県上尾市谷津一丁目2付近

   谷津公園の東側100mに位置する、
   墓地の入口に祀られている。
   ここはJR高崎線の上尾駅の
   西口からわずかに250mの地点で
   あるが、付近には谷津観音堂などの
   史跡がエアポケットのように残る。
   享和元年(1801)七月建立。
   高さ42cm、幅22cm、厚さ15cm。
   この塔は道標を兼ねていて、
   東
 上尾 原市道、南 よの道とある。

   石橋総鋪石供養
   石橋総鋪石供養
   埼玉県上尾市上町一丁目、遍照院

   非常に巨大な塔である。隣には1914年
   造の鉄道轢死者追悼供養塔がある。
   文政七年(1824)月建立。
   高さ4m(推定)、連座までの高さが
   1.6m、塔は39cm角。この塔は燈明供養、
   光明真言供養、経典読誦供養を兼ねる。
   
   正面上部に種子、勧化、願主上人真海、
   結衆百五十人。背面には石工
 岩附
   田中武兵衛。岩附は岩槻であろう。

 石橋供養塔
 石橋供養塔 鴨川(左岸)
 埼玉県上尾市西宮下一丁目、天神社

 揺木橋(鴨川)の左岸から県道51号
 川越上尾線に沿って北東へ400mの
 地点、天神社の敷地に祀られている。
 ここは、さいたま市別所町との境界に
 ほど近い。揺木橋は石橋だった記録が
 あるので、これはその供養塔だろうか。
 延享四年(1747)四月建立。
 高さ89cm、幅35cm、厚さ34cm。
 台座は60cm角のコンクリート。
 道標を兼ねていて、左側面には東
 
 あげお はらいち道 宮下村 別所村
 右側面に西 ひらかた かわこヱみち
 向山村 本郷村。裏には先祖之為
 菩提 施主 平方村 長嶋大兵衛

  石橋供養塔
  石橋供養塔 
芝川(左岸)
  埼玉県上尾市上尾下706付近

  西長橋(芝川)の左岸から北東へ
  150mの道路脇に祀られている。
  ここは、さいたま市吉野町二丁目との
  境である。芝川は荒川の支川で、
  さいたま市内では
見沼代用水路
  排水路として使われている。
  安永六年(1777)月建立。
  高さ74cm、幅30cm、厚さ20cm。
  正面上部に種子(金剛界大日を
  表すバン)。右側面に庚申講中
  助力
 十七ヶ村。この石橋供養塔は
  大日信仰の庚申講が建立したもの
  だが、17もの村が協力したと
  記されているのは石橋の建設だろう。

  
石橋供養塔
  石橋供養塔
  埼玉県上尾市地頭方、地頭方公民館
  地頭方公民館(共同墓地)の
  無縁仏の中に残されている。
  高さ82cm、幅31cm、厚さ17cm。
  (正面)種子(釈迦を表すバク)
   大乗妙典日本回國供養塔
   天下泰平
 足立郡地頭方邑
   國土安全
 行者 野原七郎兵衛
  (左)石橋供養塔
   地頭方村
 願主 野原七郎兵衛
   世話
 惣村中 助力 近郷村
  (右)了覚禅心大徳
  (裏)寛政八年(1796)五月
   吉野奈良村 喜平治
   金壱両 当村中 金二分 堤崎村
   同 中新井村 同 戸崎村

 念佛供養

  念佛供養 鴨川(右岸) 上尾市戸崎、戸崎自治会館
  戸崎地区は上尾市の南端に位置し、北側を除く地区の
  三方向は、さいたま市と接している。戸崎自治会館の
  入口には、石で造られた古風なベンチが置かれている。
  これは2つの石材の上に長さ218cm、高さ23cm、幅37cmの
  石材1枚を、井桁に組んで置いただけの簡素なものである。
  石材は江戸時代に建設された石橋の桁を転用したもので、
  桁の側面には由来を示す刻字が、3箇所になされている。
  この石橋(さかい橋)は、300m東側を流れる
鴨川
  (荒川の支川)に架けられていたと思われる。
  おそらく、現在の中橋の何世代か前の橋だろう。
  (中央)享保六年(1721) 念佛供養 六月吉日 さかい橋
  (左)戸崎村 願主十五人 (右)奈良瀬戸村
  橋名は戸崎村と奈良瀬戸村(現.さいたま市奈良町)の
  境に架けられたことに由来するのだろう。桁側面の刻字は
  石橋の竣工を記念したもので、現代だと
竣工銘板に相当する。
  石橋架橋の満願成就と通行の安全を祈願して、
  戸崎村の15名が念佛供養をおこなったものである。

(補足)上尾市に存在した石橋
 武蔵国郡村誌の2、3巻(足立郡)から、現在の上尾市の区域に存在した石橋を集計したのが、
 下記の表である。郡村誌は明治9年の調査を基に編纂された。標目数が多いうえに記述も詳細で、
 極めて優れた書である。しかし、あくまでも村誌であり橋梁の悉皆調査書ではない。
 実際に存在した石橋の数は、下記の集計(合計47基以上)よりも、もっと多かったはずである。

村名 橋名 記述内容 ページ
戸崎村 中橋 川越道に属し村の東方 鴨川の中流に架す 長九尺巾一間 335
井戸橋 川越道に属し村の東方 井川の上流に架す 長一間巾九尺  
浅間橋 川越道に属し 浅間川の上流に架す 長一間巾一間  
貝塚村 石橋 与野道に属す村の北方 天沼悪水の上流に架す 長六尺巾四尺 358
堤崎村 向石橋 川越道に属し村の南方 悪水の下流に架す 長五尺巾四尺 377
中新井村 大宮道に属し村の中央 悪水の上流に架す 長五尺巾五尺 379
原市町 *舟橋 大宮道に属す町の南方 悪水堀(芝川)の中流に架す 長一間半巾一間 383
入会橋 幸手道に属す町の東北 沼落し堀の下流に架す 長二間巾一間  
上尾下村 村道に属し村の東方 悪水の下流に架す 長二間巾九尺 408
村の南方 悪水に架す 長九尺巾六尺  
村道に属し村の南方 悪水に架す 長四尺巾九尺  
上尾宿 *矢島橋 菖蒲道に属し宿の西北 中悪水の上流に架す 長二間巾七尺 412
*道三橋 原市道に属し宿の中央 中悪水の中流に架す 長二間巾九尺  
*鎌倉橋 幸手道に属し宿の東方 中悪水の下流に架す 長三間巾二間  
*新橋 岩槻道に属し宿の東南 中悪水の下流に架す 長二間巾九尺  
*浅間前橋 中山道に属し宿の西方 道済溝の上流に架す 長二間巾二間  
*道斎橋 原市道に属し宿の中央 道斎溝の中流に架す 長一間巾五尺  
*中宿北橋 中山道に属し宿の西南 中宿溝の上流に架す 長二間巾二間  
*中宿南橋 中山道に属し宿の西南 中宿南溝の上流に架す 長二間巾二間  
*橋 中山道に属し宿の南方 上尾下界溝の上流に架す 長二間巾二間  
*二ッ宮橋 原市道に属し宿の東方 小溝に架す 長二間巾七尺  
上尾村 *矢島橋 菖蒲道に属し宿の北方 中悪水の上流に架す 長二間巾七尺 417
*道三橋 原市道に属し村の中央 中悪水の中流に架す 長二間巾九尺  
*鎌倉橋 幸手道に属し村の東方 中悪水の下流に架す 長三間巾二間  
*新橋 岩槻道に属し村の東南 中悪水の下流に架す 長二間巾九尺  
*浅間前橋 中山道に属し村の西方 道済溝の上流に架す 長二間巾二間  
*道斎橋 原市道に属し村の中央 道斎溝の中流に架す 長一間巾五尺  
*中宿北橋 中山道に属し村の西南 中宿溝の上流に架す 長二間巾二間  
*中宿南橋 中山道に属し村の西南 中宿南溝の上流に架す 長二間巾二間  
*橋 中山道に属し村の南方 上尾下界溝の上流に架す 長二間巾二間  
*二ッ宮橋 原市道に属し村の東方 小溝に架す 長二間巾七尺  
平塚村 *新堤橋 幸手道に属す村の東方 溝の下流に架す 長二間巾一間 422
菅谷村 半在橋 桶川道に属す村の東北 東谷堀の下流に架す 長一間巾四尺 14
下手橋 川越道に属す村の東方 東谷堀の下流に架す 長五尺巾四尺  
西谷橋 川越道に属す村の南方 水溜に架す 長五尺巾四尺  
門前村 坊の下橋 川越道に属し村の西方 坊の下堀の上流に架す 長一間巾四尺 23
中橋 川越道に属し村の西方 水溜りに架す 長一間巾四尺  
沖の上村   用悪水に架する石造土造の橋数ヶ所あり 長一間巾四尺以下 32
柏座村 曾我殿橋 村道に属し村の北方 用悪水の中流に架す 長一間巾五尺 37
谷津村 与野道に属し村の西方 用悪水の中流に架す 長五尺巾四尺 40
宮下村 *緩木橋 川越道に属し村の西南 鴨川の下流に架す 長二間巾二間 43
新橋 川越道に属し村の南方 用悪水の下流に架す 長八尺巾七尺  
上野村 天沼橋 村道に属し村の西南 中堀の下流に架す 長六尺巾五尺 54
石井戸橋 川越道に属し村の北方 細溝に架す 長五尺巾三尺  
大谷本郷村 *緩木橋 川越道に属し村の東北隅数村入会地 鴨川に架す 長二間巾九尺 57
向山村 *緩木橋 川越道に属し村の東方 鴨川の下流に架す 長二間巾九尺 60
今泉村 村道に属す 悪水の中流に架す 長四尺五寸巾四尺 66
川村 薹辻橋 村道に属す村の西南 悪水の上流に架す 長五尺巾四尺五寸 70
弁財村 百々木橋 村道に属し村の南方 鴨川の下流に架す 長九尺巾五尺 72
井戸木村   鴨川水源 小石橋三土橋二を架す 76
小泉村 親橋 村道に属し村の東方 鴨川水源の下流に架す 長六尺巾四尺 100
小敷谷村 寺下橋 村道に属す村の西方 悪水堀の下流に架す 長六尺巾五尺 104
大久保橋 村道に属し村の東北 大久保堀の中流に架す 長四尺巾三尺  
畔吉村 稲荷橋 川越道に属す村の南方 悪水の下流に架す 長五尺五寸巾四尺三寸 107
領家村 渡塘橋 村道に属し村の東北端 悪水の上流に架す 長五尺巾四尺五寸 111
堂閣道橋 野道に属し村の東北 悪水の中流に架す 長五尺四寸巾四尺二寸  
藤波村 新橋 村道に属し村の西方 悪水の上流に架す 長一間一尺巾四尺五寸 115
天神下橋 村道に属し 用水の中流に架す 長一間半巾四尺  
水下橋 野道に属し 用水の下流に架す 長五尺巾三尺  

(注)*を付けた橋は二村に跨るもの。


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