天端の煉瓦積み(装飾)

 樋門の構造部分は、イギリス積みで煉瓦が積まれているが、
 面壁・翼壁の天端には、煉瓦の段数と積み方に工夫を凝らして、装飾が施されている。
 積み方を確認できた55基のうち、2段積み以下が44基と80%を占める。
 1段積みで小口を横にした積み方は現存していない。
 なお、3段積みの3a(小口縦-長手横-小口横)は6基現存するが、何故かすべて中川水系である。

1a
 1a(榎戸堰組合用水樋管)
2a
 2a(京塚樋管)
2b
 2b(新久保用水樋管)
3a
 3a(庄兵衛堰枠)
3b
 3b(辯天門樋)

3c
 3c(千貫樋)

3d
 3d(北美圦樋)

4a
 4a(倉松落大口逆除)

段数  煉瓦の積み方  該当する樋管
1段
(11)
1a:小口縦  村岡樋管(熊谷市、吉見堰用水、1891)、アーチ、鋸状装飾 、要石、非・赤煉瓦
五ヶ門樋(庄和町、中川 、1892) 、アーチ、歯状装飾 、非・赤煉瓦
吉根樋管(坂戸市、高麗川、1898)、箱
大小合併門樋(志木市、新河岸川(旧堤) 、1898) 、アーチ、歯状装飾、変則積み
 
八幡堰(伊奈町、綾瀬川、1899)、撤去
鎌田樋管(東松山市、九十九川、1899)、円
榎戸堰組合用水樋管(吹上町、元荒川、1901)、アーチ、塔
 
松原堰(行田市、1901)、埋没、側壁が曲面
山王樋管(川島町、長楽用水、1901) 、アーチ
三原樋管(東松山市、都幾川、1902)、円
 
杣殿樋管(行田市〜熊谷市、忍川、1903)、箱、塔
2段
(33)
2a:小口縦-長手横  谷古田領元圦(越谷市、葛西用水、1891)、アーチ、非・赤煉瓦、現存最古
 
甚左衛門堰枠(草加市、伝右川 、1894)、2連アーチ 、塔、鋸状装飾、非・赤煉瓦
 
四箇村水閘(春日部市、中川 1896)、アーチ、鋸状装飾
 
米ノ谷樋管?(杉戸町、中川、1897)、箱、変則積み
 
大島新田関枠(杉戸町、安戸落、1897)
 
堂前堰(行田市、1901)、埋没、側壁が曲面
 
笹原門樋(川越市、八幡川?、1901) 、アーチ 、塔、歯状装飾、刻印煉瓦
 
永傳樋管(東松山市、都幾川、1901)、箱
 
永府門樋(吉見町、市野川用水、1901) 2連の箱、鋸状装飾
 
笠原堰(鴻巣市、元荒川、1902)、撤去、側壁と堰柱残存、供養塔
 
北河原用水元圦(行田市、中条堤、1903)、塔(鋸状装飾)、2連アーチ、刻印煉瓦
 
落合門樋(騎西町、見沼代用水、1903)、アーチ、塔、刻印煉瓦
 
高畑樋管(東松山市、都幾川、1903)、箱、塔、変則積み
 
奈目曽樋管(東松山市、都幾川、1903)、箱、塔、変則積み、刻印煉瓦
前吐樋管(東松山市、都幾川、1903)、円、刻印煉瓦
前樋管(東松山市、都幾川、1903)、箱、変則積み、刻印煉瓦
 
矢来門樋(東松山市、都幾川、1903)、箱、変則積み、刻印煉瓦
 
京塚樋管(川島町、長楽用水、1903)、箱、塔
 
阻水エン塔(吉見町、大沼、1904)、円、取水塔、刻印煉瓦
 
水越門樋(富士見市、新河岸川(旧堤)、1904) 、アーチ、刻印煉瓦
 
山形樋門(富士見市、新河岸川(旧堤)、1904)、箱
新圦(幸手市、中川、1905)、箱
 
笠原樋(鴻巣市、元荒川、1905)
 
四反田樋管(東松山市、都幾川、1905)、箱
 
沼口門樋(川越市、伊佐沼、1905)
 
瓦葺掛樋(蓮田市〜上尾市、見沼代用水〜綾瀬川、1908)、翼壁が曲面、刻印煉瓦
 
三軒家樋管(川越市、新河岸川放水路、1910) 、2連アーチ
二郷半領用水逃樋(三郷市、第二大場川、1912)、アーチ
二郷半領不動堀樋(三郷市、第二大場川、1914)、アーチ
 
小剣樋管(東松山市、都幾川、1914)、箱、塔、変則積み
2b:小口横-長手横 新久保用水樋管(菖蒲町、備前堀川、1915)、箱、塔、刻印煉瓦
2c:小口縦-小口横  天神沼樋(吉見町、天神沼、1903)、卵形、楕円形集水枡、塔、翼壁が曲面(小口積み)
 
名称不明(熊谷市、荒川、不明)、埋没 、2連アーチ、刻印煉瓦
3段
(10)
3a:小口縦-長手横-小口横 榎戸堰(吹上町、元荒川、1903)、側壁残存
 
皿田樋管(蓮田市、元荒川、1903)、円
庄兵衛堰枠(白岡町、庄兵衛堀川、1907)、埋没、刻印煉瓦
古笊田堰(久喜市、備前堀川、1909)
弐郷半領猿又閘門(東京都葛飾区、大場川、1909)、4連アーチ
小針落伏越(行田市〜川里町、小針落、1914)、アーチ、刻印煉瓦
3b:小口縦-長手横-長手横 辯天門樋(行田市、旧忍川、1905)、アーチ、塔、翼壁が曲面、刻印煉瓦
3c:小口縦-小口横-長手横 千貫樋(さいたま市、荒川(旧堤)、1904)、2連アーチ
3d:小口横-長手横-長手横 北美圦樋(志木市、新河岸川(旧堤)、1899)、箱、変則積み
新田圦樋(志木市、新河岸川(旧堤)、1900)、箱、変則積み
4段
(1)
4a:小口縦-長手横-角-長手横 倉松落大口逆除(春日部市、旧倉松落 、1891)、4連アーチ、鋸状装飾 、非・赤煉瓦
 表中の*は、翼壁天端に迫り出し(煉瓦積みを段毎に少しずつずらして立体感を出した)装飾が施されたもの。
 
ただし、2段では33基中30基は、天端の2段が迫り出しているので(例外は谷古田領元圦甚左衛門堰枠四箇村水閘)、
 1段目と2段目が異なる迫り出しをしているものに*を付けた。

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